中国語学習ストーリー

[ Story 1 ] 自動車メーカ知財部

 私は、中国の模倣品対策の仕事に関わっていた関係上、中国での訴訟対応、出願対応の仕事が多く、中国語に興味を持ち、週末に語学学校に通って中国語を一から勉強し始めました。

 具体的には、週末に語学学校に通ったり、会社の中国語講座を受講したりして、熱心に且つお金(十数万円)をかけて中国語を学んだつもりでしたが、仕事で中国語を使うことなく中国語の学習を中断してしまいました。

 その中断の理由を今考えてみると、勉強すれば日常会話程度の中国語は解るようになりますが、特許実務で必要なのは「中国語のClaim、明細書などを読めるスキル」です。時間をかけて学習したのですが、「それができそうだ」という実感が得られなかったからというのもあったと思います。

 学生時代から中国語を勉強している方ならまだしも、中国語を一から始める会社員が、そこまでのスキルを身に着けるための勉強時間を確保することは、難しいのではないでしょうか。


[ Story 2 ] DRAGON IP (『技術系の中国語学習書』の著者)

 私は、日本で3時間ピンインを学習後、中国の2つの大学で4ヶ月ずつ中国語を勉強しました。
 2つ目の大学に通っている際、大学で授業がない半日は、Dragon IPに通っていました。
 大学の授業では、発音、会話、聞き取り、文法を、主に勉強します。
 私は、中国語明細書の中日翻訳ができるようになることを目標の一つにしていたので、『Why? にこたえる はじめての中国語の文法書』を参考にしながら、特に文法に力をいれて勉強していたつもりでした。
 しかし、中国語を4ヶ月勉強した後、中国特許実務を開始しましたが中国語Claimを全く読解(リーディング)できませんでした。

 一般に、中国語は、「学習初期には易しいと感じるが、学習を進めるとゴールがなかなか見えない」と言われています。

『いっぽうわれらが中国山は、ぶらぶらゆっくり歩きはじめても、坂らしい坂などほとんど出てこない。しばらく歩きつづけているうちにやがて少し勾配がある坂に出くわすが、それとてそんなにきつい坂ではない。しかしこの山道は、困ったことにかなり歩いても標高がほとんど上がらず、なかなか山頂が見えてこないのである。』(近くて遠い中国語P33 阿辻哲次著 中公新書)

 通常の中国語学習の手段としては、①市販の学習書、②語学学校、③中国留学が挙げられますが、私は、①と③を利用したところ、中国語の読解面(リーディングの面)において、その山頂を全く見ることができませんでした。
 発音、会話、聞き取り、文法という中国語全般を浅く広く学ぶ一般的な中国語学習方法では、私の場合、中国語Claimを読解(リーディング)できることに直結しませんでした。

 中国語Claimを読解(リーディング)できなかった具体的な理由は、次の3つだと考えています。

① 中国語Claimは、修飾関係が複雑。

 中国語Claimは通常の中国語の文章と比べて修飾関係が複雑ですが、その複雑な修飾関係のある中国語について、市販の文法書は軽く触れるだけでしっかりとは解説していません。もちろん、その読解方法(リーディングの方法)も記載されていません。なお、中国語Claimの修飾関係が複雑な理由は、一文に複数の内容が含まれているからです。

② 中国語Claimの構造を知らなかった。

 中国語の特許翻訳に関する書籍はありませんでした。

③ 中国語Claimに頻出の用語について用法を知らなかった。

 中国語文法用例辞典を持ってはいたのですが、使えていませんでした。その用語の用法は記載されていますが、各用語がピンインにしたがって記載され、探している用語の記載箇所を見つけにくかったこと、用例が多く記載されて難しそうだったことなどから、効率よく利用できていませんでした。

 また、中国語文法用例辞典にも載っていない用法は、もちろん知りませんでした。
 中国語Nativeの感覚も知りませんでした。

 つまり、中国語Claimを読解(リーディング)するためには、『中国語の基本文法を超えたところの知識』が必要でした。

 英語の場合は、特許実務者が作成した、特許翻訳に関する書籍が多数出版されていますが、中国語の場合には、特許翻訳に関するものは一つも出版されていませんでした。

 このため、中国語Claimを理解するために私が採ることのできた唯一の方法は、同僚に聞くことでした。1人の同僚に集中して質問をすると迷惑がかかるので、3人の同僚にローテーションで質問をしていました。

 この方法は、わからないところがあればその都度一つずつ質問していくという方法です。時間がかかりました。

 今になって思うのですが、その当時私が中国語Claimを読めるようになるためにしなければならない質問が、例えば500個あったとします。その500個の質問は、『Why? にこたえる はじめての中国語の文法書』にあるように、「動詞」に関するもの、「介詞」に関するもの、「的」に関するものというように、本来は分類できるものです。

 しかし、実務を通じて出てくる質問が、例えば今月は「動詞」に関するものだけ、来月は「的」に関するものだけ、というように順序立てられて出てくればよいのですが、実際はそうではありません。毎日ランダムに出てきました。また、私が質問していた当時は、そもそも上記の質問の数が全部でいくつあるのかすら分かりませんでしたので、いつになったら自力で中国語Claimを読めるようになるのだろうかと思いながら実務をしていました。

 重複した質問もしていたと思います。

 また、私は日本語Nativeであり漢字の意味がわかるので、市販の文法書に記載された知識では理解することができなかった複雑な中国語Claimの文について、感覚で文全体の意味を予想した後、同僚に確認をしてみるということをもしてみましたが、私の予想はいつも外れていました。
 同僚からは、その都度、「まず動詞を探しましょう」と言われていましたが、その当時は、その同僚の言う意味がよくわかりませんでした。

 その一方で、中国語Nativeは、構造が複雑な中国語の文であっても必ず読解(リーディング)できているので、その構造を確実に分析することができるルールのようなものが存在しているはずだと漠然と考えていました。

 例えば、日本語の場合、『長い修飾語は前に、短い修飾語は後ろに』、『長い修飾語が二つ以上あるとき、その境界にテンをうつ』、『逆順の場合にテンをうつ』(日本語の作文技術、本多勝一)というルールがありますが、このようなルールに対応するものが中国語にも存在するのではないかと思っていました。

 そのようなルールを常に探しながら中国語Claimを読みつづけ、同僚に質問する頻度は少しずつですが、減っていきました。

 同僚の助けを借りながら時間をかけて100万文字の中国語Claimを読み、同僚に質問をすることがほとんどなくなり、そのルールを主観的に見つけ出していました(山頂が見えていました)。

 そのルールは、すべて『技術系の中国語学習書』(中国語特許明細書を読む。書く。に記載されています。

 また、当該書籍をテキストとして用いた中国語読解ゼミの通信講座において、詳細に解説されています。
(中国語読解ゼミ You Tube 動画:http://youtu.be/mS7zeo6RLhU